勝手なお願い

2011/03/06 Sun 15:51

私の勤める整形外科では、
自力で通院が大変な患者さん(遠方で車が運転できないお年寄り等)の為に、
無料の送迎バスを出している。
患者さんの家の玄関先まで迎えにいくらしく、大変好評。

勿論、治療が目的ではあるのだが、
一日特に仕事を持たない高齢の方にとっては、
病院で過ごす半日は、
大変楽しいのだそうだ。

この送迎バスを利用されている患者さんは数十人いらっしゃる。

Nさんもその中のひとり。
80何歳だったかと思う。
脳梗塞で手足に麻痺が残り、そのリハビリのために通院されていた。
いつも温厚で、ニコニコ。
口数は少ないけど、
優しさが滲み出ているような感じ。
行動がかなりスローなので、
ついつい、あれこれと手をかしてあげたくなるが、
リハビリの為に、あまり手を出してはいけない。
でも、つい、
お洋服を着る時も、袖を通しやすいように、してあげちゃいたくなる。
だって、凄く嬉しい顔をしてくれるんだもの。
(これは、リハビリ助手としては駄目なんだけどね。)


ここ数日、Nさんの姿が見えないな、と思っていたら、
先日、Nさんの奥様が、治療に見えて、私だけにそっと話をしていった。

Nさん、
大学病院に入院したらしい。

「もう、駄目なんですよ。」
と、奥様が仰る。

「家に帰りたい、って、見舞いに行く度に言うんですよ。
 『昨日は、家で家族揃ってご飯を食べる夢見たんだ。』
 って、言われてねぇ。。。」

と涙ぐまれる。

「ここにバスで通うのを、とっても楽しみにしていたんですよ。
 ○○先生(恥ずかしながら私の事)にも大変お世話になりました。
 優しくして頂いて…、とっても嬉しかったみたいですよ。
 ありがとうございます。」と。
 


気付いたら、私も泣いていた。

医療従事者は、泣いてはいけない。

それは、充分に知っている。
でも、
涙は、勝手にでてくるだもの。
気の利いた言葉のひとつもかけてさしあげる事ができなかった自分が情けない。

医療従事者として、私は失格だな、と
一日落ち込んでしまった。

そして、あの優しいNさんに、もう会えないんだ、と思うと、
今でも悲しくて仕方がない。
どうにか助けてあげたくても、私には何もできない。

人はいつかは死ぬんだから、
仕方ない事だけど、
何もできない自分が情けない。

自分ができないのに、こんな事、他の人に望むのもおかしい話なんだろうけど、

携帯電話なんて今以上薄くしなくていいからさ。
そんな凄い頭脳を持っている人達は、
どうか、癌を治せる薬の開発について下さい。


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